2025年8月18日(月)、川崎市立川崎高等学校附属中学校の1~3年生と引率の先生(合計19名)が、国立国語研究所に来所されました。
はじめに、全国で唯一の日本語に関する専門図書室である「研究図書室」を見学していただきました。



図書室見学の後は、松下達彦教授による講義とワークショップの時間です。
講義の前に座席のシャッフルが行われ、3学年が混ざるように着席しました。生徒の皆さんは「何のためだろう?」と不思議そうな表情を浮かべています。
最初に、事前アンケートで生徒の皆さんに書いていただいた、「研究者」や「日本語を教える仕事」への質問に対する回答がありました。

その中で松下教授は、「たとえば日本語学校で日本語を教える場合、学習者の母語がさまざまなので、外国語は使わずほとんど日本語だけで教えます。」と話しました。
日本語がわからない人に、どうやって日本語で教えるのか――。
ここから体験型のワークショップが始まります。
まず、松下教授は身振りを交えながら、日本語ではなく中国語で「これは本です」「これは机です」といった短い文を話し始めました。生徒の皆さんは最初は戸惑っていましたが、次第に「なんとなく意味がわかる」感覚を持ちはじめます。

さらに、一部分を変えた短い文をいくつも聞くうちに、特別な説明がなくても、知らないことばの意味を推測できることを体感しました。
続いて「マママ語」の体験です。事前に生徒の皆さんには「自己PR用の写真や絵」と、その説明文を用意していただきました。

説明文の1文につき1つキーワードを残し、それ以外はすべて「マ」に置き換えましょうという指示が出ます。たとえば「私は猫が好きです」は「ママママ ねこマ ママママ」となります。

次に隣の席の人とペアになり、写真や絵を見せながら「マママ語」で相手に自己PRをします。ここで初めて、座席シャッフルの意図が明らかになりました。お互いをよく知らない人同士が、ことばの通じない中で「伝える」体験をするのです。

部屋のあちこちで「マママ」が飛び交い、笑いが起こりながらも、ことばが通じない相手に伝えることの難しさ、逆にキーワードや表情だけでも伝えられることがある、ということを実感しました。
最後に、松下教授の専門分野についてのお話がありました。その中で応用言語学は、言語学の中でも「人間とのかかわりを扱う分野である」と紹介されました。

そして、人間を相手にする日本語教育という仕事は、言語以外にも幅広い知識をもち、好奇心と柔軟性のある人が向いていると話しました。

来所された中学生の皆さんにとって、今回の経験がご自身の進路や生き方を考えるきっかけとなりましたら幸いです。