国語研の窓

第13号(2002年10月1日発行)

報告:「ことば」フォーラムin熊本

ことばフォーラムin熊本【ことば探検・ことば発見】(NHK熊本放送局と共催)を,8月28日(水)に熊本市国際交流会館で,216人の参加者を得て開催しました。今回は,中学生・高校生のみなさんにも報告者として参加していただき,会場全体で活発な意見交換が行われました。

≪第1部≫話しことばの豊かさと円滑なコミュニケーション
★話しことばの豊かさ-暮らしのことば再発見-
★敬語が豊かなコミュニケーション-熊本の敬意表現調査から-
★外国人とのコミュニケーション
≪第2部≫『ことばビデオ』を活用した総合的な学習
★ことばビデオ『ことば探検・ことば発見』を活用した小中学校の総合的な学習(第1会場)
★ことばビテオ『相手を理解する』を活用した高校の総合的な学習(第2会場)

第1部では,国立国語研究所の調査研究と,NHK「ふるさと日本のことば」の成果を提供しながら,会場のみなさんと話し合いました。その様子は,NHK地域情報番組「ひのくにプラザ」の拡大版として,当日夕方,総合テレビで放送されました。

第2部では,国立国語研究所の「ことばビデオ」を紹介し,それを活用した総合的な学習の実践報告を二会場で行いました。「ことばビデオ」は,児童・生徒のみなさんのことばへの興味と関心を喚起し,日本語の豊かさや表現の魅力に気づかせることをねらって制作したものです。

第1会場では,八代市立第五中学校3年生4チームのみなさんが,パソコンを使って,『ことば探検・ことば発見』を活用したことばに関する調査研究の報告をしてくださいました。「スポーツのかけ声の種類と意味」チームは,かけ声を使う理由について,「できるだけ短いことばで伝えたいことを簡潔にあらわすため」「勝利を目指すためにやるべきことを確認し,お互いに集中し合うため」と分析しました。「身体の部位」チームは,お年寄りがよく使う身体部位を表す熊本方言について調査し,世代間コミュニケーションを円滑にするために,若い世代の理解を深めることが重要と指摘しました。「接頭語・語尾の言い方」チームは,「つっこける」の「つっ」や,「そぎゃんかい」の「かい」などを使う意図を,「自分の気持ちをよりリアルに伝えたい」「親しみが感じられる」「雰囲気をもりあげる」と分析しました。「熊本民謡『大鞘(おざや)名所』の歌詞の意味」チームは,運動会の団体演技で用いられる民謡「大鞘名所」の意味とその社会的背景を調査し,干拓工事の苦しい労働における労働歌のはたらきについて分析しました。

パソコンを使って発表する中学生のみなさん(写真提供・八代市立第五中学校)
パソコンを使って発表する中学生のみなさん(写真提供・八代市立第五中学校)

第2会場では,熊本県立鹿本高校の濱田賢明校長から,同校の先進的な総合学習について紹介があり,生徒のみなさんが,「ことばビデオ」の活用や,「相手を理解する」ことについて意見を発表してくださいました。

二つの会場とも,参加者のみなさんとの活発な討論によって,情報交換・交流を深めることができました。「ことばビデオ」がますます広く活用されることを期侍します。

(吉岡 泰夫)

  第11回「ことば」フォーラム:http://www.ninjal.ac.jp/archives/event_past/forum/11/

『国語研の窓』は1999年~2009年に発行された広報誌です。記事内のデータやURLは全て発行当時のものです。