「お母さんがわじわじ怒っている」「弟がさるさるかわいいね」…、みなさんはどんな情景を思い浮かべますか?
沖永良部島のユニークなオノマトペ(擬音語・擬態語)を集めた方言絵本『シマノトペ』が、消滅危機言語の保存と継承を目指すプロジェクト『言語復興の港』から出版されました。沖永良部島では方言のことを「しまむに(島+ことば)」と言います。『シマノトペ』は「しまのおと(音)+オノマトペ」から名付けられました。
口ずさみやすいリズムのオノマトペを繰り返すうちに、どなたでも自然と「しまむに(方言)」に親しんでいただけます。イラストも大変かわいらしいので、小さなお子さまへの読み聞かせにもおすすめしたい一冊です。
『言語復興の港』とは、国立国語研究所の山田真寛 准教授(言語変異研究領域)らを中心に、言語学者、イラストレーター、デザイナーなどが集まり、消滅危機言語の保存と継承を目指すプロジェクトです。地域言語コミュニティが、じぶんたちで地域言語を残すことができるようなしくみづくりを目指しています。
今回、『シマノトペ』絵本の文章を担当したのは、琉球諸語を研究している横山晶子 先生(日本学術振興会 特別研究員/国立国語研究所)。先生が琉球諸語の研究を始めたきっかけは、”方言の オノマトペ” なのだそうです。
例えば、冒頭の「わじわじ」は、沖永良部島のことばで ”怒りなどで体がぶるぶる震えているような感じ” を表しており、「さるさる」は標準語の「ちょこちょこ」に該当するオノマトペだそうです。標準語とは違う感覚や、ユニークな音の響きを持つ ”方言の オノマトペ” にすっかり魅了され、いつかこの面白さを伝えたいと考えていた横山先生。転機となったのは、現在、3歳になるお子さんの誕生でした。
「小さなこどもはオノマトペが大好きで、絵本を読んでいてもオノマトペのところだけ口に出したりします。そして、リズムさえ良ければ外国語でもすっかり覚えてしまう。島ことばをこどもたちに楽しんで覚えてもらうには、オノマトペはとても良い教材になるのではないか?と思いました。」(横山先生)
その思いから誕生した『シマノトペ』絵本には、「あちゃ(お父さん)」「あま(お母さん)」など、お子さんにまず覚えてほしい親族名詞がたくさん盛り込まれています。
絵本には、横山先生が調査で集めた沖永良部のオノマトペ(134個)の中でも、沖永良部方言を知らない人に「面白い」と人気だったものを厳選し、掲載してあります。
簡単な「島むに(島ことば)」の文法解説がついており、言語復興の港webサイトで読み上げ音声も公開されているので、沖永良部方言に初めてふれる方でも、問題なく楽しんでいただけます。
また、発行元の「言語復興の港」のwebサイトからは、『シマノトペ』絵本の文字なし版(PDF)がダウンロードできます。印刷した絵本にご自身の出身地の方言を書き込めば、自分だけの絵本ができあがります。
お子さまやお孫さんにご自身の出身地のことばを伝えたり、地元の方言保存活動に使ったり、さまざまにご利用いただけます。
『シマノトペ』の絵とデザインを担当した山本史さんは、京都市立芸術大学で「言語復興のためのビジュアルコミュニケーションデザイン」をテーマに研究をしています。
取材にもとづいて昭和初期頃の島の家族の暮らしを絵にしたり、それぞれのオノマトペをイメージした手書き文字などを作中に使うことで、本の物語やことばの意味を見た目からも伝える工夫をしています。
(山本史さんのサイト : https://www.fumiyamamoto.com/)
著者 | 文 : 横山晶子、絵 : 山本史 |
出版社 | 言語復興の港 |
出版年月日 | 2019年3月1日 |
購入方法 | 沖永良部島内の観光協会や商店のほか、インターネットの通信販売でお求めいただけます。「言語復興の港」みなと商店(https://plrminato.wixsite.com/webminato/shimanotope) |
価格 | 500円+税 ※web購入の場合、配送料(360円 : レターパック) |
新聞掲載 | 横山晶子先生と『シマノトペ』絵本が紹介されました
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