二桁の番地を縦書きに書く場合、「十」の漢数字を使うかどうか、迷います。たとえば、洋数字で書けば「12」のところを、漢字の縦書きに「十二」ではなく「一二」とすると、「三」と紛らわしくなったり、間違いやすかったりする場合もあるか、と思います。縦書きの数字の書き方に、決まりやコツはありますか。
公的機関の発信や、学校教育の参考にされることの多い、公用文における表記の決まりや原則には、縦書きの場合を含まないので、直接参考にできるものは見当たりません。
普通の文章で二桁の数字を書く場合、たとえば人の年齢の話と分かっていれば、漢数字の「十」がなくても、その年齢を不自由なく理解できます。これは、読み手の期待し、想定する語や文字を受けとめようとする前提があるからといえるでしょう。書き言葉とその文字というのは、その文章全体や周囲の内容や背景といった、いわゆる状況・文脈の流れあってのことです。
その意味では、この質問の場合も、住所を葉書や手紙の表書きにするという点で、いわば状況・文脈が限られています。ですから、むやみに間違えやすいということはないでしょう。ただし、質問者の心配するように、外形の混じりやすい漢字が並ぶと紛らわしいので、字間や筆画の長さに配慮する必要はありそうです。
一方、最近の新聞をはじめ、縦書きの印刷物で、二桁や三桁の洋数字を、そこだけ一字分のスペースに横書きすることも多くなってきました。読む側、見る側もそれに慣れてきています。洋数字を縦書きに用いることは、周囲にそぐわない、伝統に外れる、と考える向きもありましょう。しかし、実質的に数字の内容をわかりやすく伝えられるなら、それで十分だとも言えます。さらに、文字の埋め方やデザインとして、縦書きの漢数字の代わりに、一字ずつ洋数字を並べて用いるといったものも、もう一つの表現方法である、と言えそうです。
やや話はそれますが、たとえば洋数字で「20」とする場合はどうでしょうか。縦書きで「二十」もあれば、「二〇」もあります。「二〇」は漢数字と洋数字を混ぜています。しかし、たとえば「22」のことを「二2」などと混ぜるのと同じほどの違和感はないでしょう。すなわち、この洋数字の表記は、桁を示すこと(その桁に「0」が埋まっているかどうか)に主眼がある、といえます。その典型は郵便番号です。「0」で始まる部分もあります。また三桁(百番台)の番地や、マンションの部屋番号などは、桁数の「百」や「十」を入れて書くとかえって煩雑で、しかも番地や室の番号を表すもの、という実感から遠くなります。
大抵は二桁三桁でおさまる番地や室の番号、最近百歳を越えることも多くなってきた年齢表記、さらには賞状の類の元号の年数や月日の表記、これらはそれぞれ、文脈・状況における数の範囲や意味が異なります。結局、読む側が期待し、予想する数に大きくはずれない書き方が、もっとも穏やかに受け入れられる、という考え方をしてはいかがでしょうか。正しい書き方が一通りだけ、というよりも、ふさわしい書き方の選択の問題です。これは、決まりに従えばよい、というには必ずしも収まらないことです。