Vol. 7 (2020年3月発行)
国立国語研究所の刊行物の中で文句なしのベストセラー。ただし『分類語彙表』という無味乾燥な書名には理由がある。国語研は、創立から半世紀以上、書きことばの基本語彙選定を目的として語彙調査を繰り返した。そこでは、まず、使用率順(頻度順)語彙表が作成され、高頻度・広範囲に使用されるという量的な側面から基本語彙が選定されたが、同時に、それらが語彙の意味的な体系の中にどのように分布しているかを示す語彙表も作られた。それが「分類語彙表」である。
1964年に刊行された初版『分類語彙表』は、そうした「分類語彙表」の完成形ともいえる雑誌九十種調査のそれに阪本一郎氏の『教育基本語彙』を加え、延べ約3万2千語を798の分類項目(意味分野)に分類したもので、もはや単一の語彙調査の語彙表ではなく、現代日本語の本格的なシソーラスと言えるものであった。その後、2004年には延べ約9万6千語を895項目に分類した増補改訂版が刊行され、現在ではそのデータベース版も利用できるようになっている。意味から単語を引く表現辞典としても、語彙研究をはじめとする様々な言語研究のデータや基準枠・参照枠としても、その利用価値の高さは実証済みである。
▶石井正彦(大阪大学)
※ 国立国語研究所が70年の歴史において刊行してきた資料・報告のうち、代表的なもの(の一部)を紹介します。