ことばの波止場

Vol. 7 (2020年3月発行)

著書紹介 : Ideophones, Mimetics and Expressives ( Iconicity in Language and Literature 16 )

Kimi Akita and Prashant Pardeshi  ( Eds. )
John Benjamins、2019年5月

Ideophones, Mimetics and Expressives (Iconicity in Language and Literature 16)
『Ideophones, Mimetics and Expressive ( Iconicity in Language and Literature 16 )』書影

音そのものに意味はあるのだろうか?この問いは古代から学者たちを魅了してきた。基本的に、現代言語学はこの問いに否定的だった。 [aoi] という音も [blu] という音もちっとも「青くない」。しかし、日本語には擬態語・擬声語が多く存在する。「ピヨピヨ」鳴くひよこの声は、やっぱり「ピヨピヨ」聞こえる気がする。日本語における擬態語・擬声語の分析は昔から盛んだったが、近年の研究でアフリカや南米の言語でも似たような語が多く使われることが分かってきた。

この学問的発展を背景に、本書は様々な著者による擬態語・擬声語の分析を報告している。分析の視点は、歴史・音・意味・語形成・文形成・言語習得など様々。対象となっている言語も、日本語はもちろん、韓国語・バスク語・チェコ語・キチュワ語(南米)、その他多数。よって、読み応えは十分。他言語の擬態語・擬声語の例を見ているだけで楽しくなってくる。現在、問いとすべきは、「音に意味があるかないか」ではなく、「どんなときに音そのものの意味が表出するのか」であろう。

新進気鋭の若手と大御所が編集した本書は、この国際的な研究をこれからも日本が牽引していくであろうことを予感させる重要な一冊だ。

▶ 川原繁人(慶應義塾大学)