国語研の窓

第7号(2001年4月1日発行)

解説:国語審議会が答申した「表外漢字字体表」について

戦後間もない1946年に,一般の社会生活において現代の国語を書き表す漢字の範囲を示すために「当用漢字表」が制定され,漢字は「当用漢字表」に載っている1850字を使用するという意識が一般に強くなったといわれています。それに代わって1981年に公布された「常用漢字表」には,漢字が1945字掲載されており,これを「常用漢字」,「表内字」と呼ぶことがあります。その「常用漢字表」に含まれていない漢字を,「常用漢字表外字」,略して「表外字」または「表外漢字」と呼びます。「誰」「頃」「迄」「岡」「藤」「弘」などがその例です。

「常用漢字表」は,「当用漢字表」でいう漢字の「範囲」ではなく,「目安」を示したものであるために,表外漢字の使用が増える傾向が生まれたといわれています。さらにそれと前後して,日本語ワープロに代表される電子機器において「仮名漢字変換」などの方法で,表外漢字も比較的簡単に入力できるようになってきました。電子機器で一般に用いることができる漢字として,JIS規格(漢字コード)は第1水準・第2水準合わせて6300字余りを定めており,そのうち4300字以上が表外漢字です。

こうした表外漢字には,同じ字に複数の字体が使われているケースがあり,それを調整するために,第22期の国語審議会は,「表外漢字字体表」(2000年12月)を答申しました。これは,活字設計の歴史的な実態や,書籍・雑誌・新聞に対する使用頻度調査に基づき,1022字の表外漢字を選び,それらに「印刷標準字体」を示すとともに,そのうち22字に対して,使用しても基本的には支障ないとする「簡易慣用字体」などを付記したものです。

現行のJIS規格には,従来の漢和辞典,国語辞典や一般書籍,教科書などで多く印刷されている字体(康煕(こうき)字典体とも呼ばれます)と異なっている字体があります。「常用漢字表」の新字体,たとえば「麥→麦」,「讀→読」を応用して,次のように一部の表外漢字の字体を簡略化して示しています。

 style=」→「麺」 「 style=」→「 style=

これらの略字は,手書きの場合のほか,一部の新聞や出版物でも活字として使われていました。

今回の表では,上記の「 style=:麺」は前者が印刷標準字体,後者が簡易慣用字体となり,「 style= style=」は前者が印刷標準字体となりましたが,後者は簡易慣用字体とはなりませんでした。印刷標準字体は,一般的な漢和辞典に見出し字として示されているものとほぼ一致しますが,「人名用漢字」や「草冠」をもつ漢字の草冠,「 style=(餅)」(餠)「讃」(讚)「兎」(兔)のように,実際の使用実態を優先させたものもあります。また,「しんにょう・示偏・食偏」の3部首については,既存のいわゆる新字体を許容していますので,印刷標準字体となった「 style=」を例にとると,JIS漢字の「祷」が簡易慣用字体,新聞に見られる「 style=」が許容となります。

「表外漢字字体表」の一部
「表外漢字字体表」の一部

なお,この表は,手書き文字や各種専門分野,個々人,従来の文献,現行の固有名詞の漢字には適用されないものと述べていますが,漢字コードや各種の基準等の改訂に言及しています。

表には,通し番号,音ないし訓,印刷標準字体,簡易慣用字体,備考の5つの欄が設けられています。備考欄には,先に触れた3部首に関する許容,細かいデザインの差の存在などが注記されています。使用頻度が低いなどの理由により,この表に載らなかった表外漢字については,従来,漢和辞典等に掲げられてきた字体を印刷文字とする原則が示されています。

(笹原 宏之)

なお,「表外漢字字体表」は文部科学省のホームページに,国語審議会の答申として掲載されています。
  http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/t20001208002/t20001208002.html

『国語研の窓』は1999年~2009年に発行された広報誌です。記事内のデータやURLは全て発行当時のものです。