国語研の窓

第14号(2003年1月1日発行)

研究室から:「日本語情報資料館」計画

「日本語情報資料館」とは

日本語・日本語研究に関する情報を国内外に発信する上で,インターネットはたいへん重要な位置を占めています。「日本語情報資料館」計画は,国立国語研究所が蓄積してきた日本語・日本語研究に関する情報や資料を,インターネットを通じて公開するシステムを作ろうという計画です。

「日本語情報資料館」には,インターネット上で研究所の報告書等を検索・閲覧できる「電子図書館」と,日本語に関する情報や資料を検索・利用できる「電子資料館」が含まれます。また,日本語教育に関する情報提供と日本語教育教材用の素材提供を行う「日本語教育支援ネットワーク・システム」も資料館の一部に位置づけられます(図1参照)。

図1 「日本語情報資料館」概念図
図1 「日本語情報資料館」概念図

国立国語研究所は,1948年の設立以来,日本語に関する数多くの調査研究を行ってきました。研究所には,その際に作成された資料が数多く蓄積されており,日本語に関する重要な基礎資料となっています。また,「日本語に関してどのような研究が行われているのか」,「社会では日本語に関してどのようなことが起きているのか」という情報も,継続的に収集・蓄積しています。

しかし,資料というものは,放っておくと,時間の経過とともに劣化したり,散逸したりすることが避けられません。蓄積された情報を,知的共有財産として将来に継承し,時代を超えて研究のために有効活用していくためには,継続的かつ組織的な取り組みが不可欠です。「日本語情報資料館」計画は,このような取り組みの一環として行っているもので,

  1. 国立国語研究所が保有する情報・資料への総合的な検索手段の提供
  2. 情報・資料の電子化による資料の保存・利用の高度化
  3. インターネットを利用した国内外への公開

などのことを目標にしています。

以下では,「日本語情報資料館」の中の「電子図書館」と「電子資料館」について,簡単にご紹介します。

電子図書館-研究報告書等の電子化と公開-

「電子図書館」では,国立国語研究所がこれまでに刊行してきた研究報告書や資料集を電子化したものを「電子化報告書」として公開します。現在,刊行順に電子化を行い,順次インターネット上で公開しています(http://www.kokken.go.jp/siryokan 図2参照)。

図2 「電子図書館」検索画面と電子化報告書
図2 「電子図書館」検索画面と電子化報告書

国語研究所の研究報告書や資料集は,日本語に関する基礎的資料であり,また,日本語に関する先駆的な研究として重要な役割を担ったものも数多くあります。しかし,現在では入手が難しいものも少なくありません。また,海外では一層の困難が予想されます。研究報告集や資料集を「電子化報告書」という形で公開することは,国内外の研究者を含む多くの人々がこれらの基礎資料に接することを容易にし,広く社会全体で研究成果を共有することを可能にしてくれます。

「電子図書館」は,国立国語研究所図書館の図書館情報システムと連動しており,図書館の目録検索システム(https://www.kokken.go.jp/tosyo_kensaku/)を経由しても利用することができます。

電子資料館-言語資料の電子化と公開-

「電子資料館」では,電子化した言語資料をインターネット上で公開します。公開される資料には,文字資料のほか,音声資料や画像資料も含まれます。

資料の電子化には,「資料劣化への対策」としての側面と「電子化による新たな利用への展開」という二つの側面があります。例えば,国語研究所には,方言談話資料,24時間調査の録音資料,言語生活の録音資料,その他各種の音声資料が保存されています。これらの資料を電子化することは,資料の劣化の防止に役立つだけでなく,原資料を新たな視点から分析し直したり,新たな研究を展開させたりするのに役立ちます。

また,科学研究費の補助を受けて「日本言語地図データベース」の作成を進めています。『日本言語地図』は,全国各地の方言において「どこにどのような語形や発音が現れるか」を地図上に表示したものです。日本全国の方言の分布を一望できる貴重な資料で,国語研究所の代表的な研究成果の一つです。調査は1957年から1965年にかけて行われ,調査地点数は2400,調査項目数は285に及びます。

この『日本言語地図』の原資料は,調査者によって記入された約50万枚のカードで,国語研究所にはその一式が保存されています(図3参照)。現在,このカードを画像データ化するとともに,地図化された各地点の語形等に関する情報も,文字情報として電子化を進めています(平成16年度の公開を目指しています)。

図3 『日本言語地図』の原資料
図3 『日本言語地図』の原資料

このデータベース化が完了すれば,原資料であるカードの情報は全て画像として電子化され,文字情報と合わせることによって,検索や統計的な処理に耐えるデータが揃うことになります。また,原資料の保存と活用,ネットワークを利用した資料の共有への道が開かれることになります。

「日本語情報資料館」では,ここで述べた以外にも,索引情報や目録情報をはじめ,国語研究所で保存されている資料に関する情報も作成しています。

「日本語情報資料館」計画は,平成13年度に開始し,現在部分的な公開を進めながら,平成17年度中に全体システムを一通り完成させることを目標としています。「日本語情報資料館」に対するご意見やご要望等がございましたら,日本語情報資料館担当までお寄せください。個々のご意見にはお答えできませんが,「日本語情報資料館」をよりよいものにするために活用させていただきます。

(熊谷 康雄・森本 祥子)

『国語研の窓』は1999年~2009年に発行された広報誌です。記事内のデータやURLは全て発行当時のものです。