北インドを中心に話されているヒンディー語(Hindi)は話者人口の数で世界のトップ5に入る大言語である。しかし、日本では認知度が低く(いまだに「ヒンズー語」と間違って呼ばれる)、文法書や学習書はいずれも初級レベルにとどまっている。本書はこれらの語学書と一線を画す初めての本格的な研究書であり、世界的に見てもレベルの高いものである。本書の研究対象は“I have a car.”、“She has two brothers.”のような叙述所有の表現である。文法書では数ページの説明で終わる項目であるが、本書は50以上の言語の例を挙げながらヒンディー語の6つの所有表現を詳細に考察し、所有をめぐる言語の普遍性と個別性を明らかにしている。また、第6章では所有から義務への文法化について論じている。