Vol. 7 (2020年3月発行)
国立国語研究所は2001年度から5年間、日本語や言語生活に関する調査研究の成果を生かした「ことばビデオ」を作成した。「すみません」、「ほめる」、丁寧なことば、方言、あいまいな表現、日本語の音声等をテーマに、身近なことばの不思議さや、ことばによって引き起こされる摩擦を入り口にしてことばについて考え、話し合うきっかけを提供することが目的である。
国語科やコミュニケーションの授業はもちろん、日本語教育においても活用できる。たとえば、「日本語はあいまい」と教えられがちであり、本ビデオでもあいまいな断り方に起因する摩擦が紹介される。しかしその後に、実は、重要な用件を断る際には「できません」のようなはっきりした表現を使う人が大半であるという調査結果が示される。日本語に対する思い込みに気づかせてくれる好例である。調査結果は古くなったとしても、この例に見るようなことばに対する視点や持つべき態度は容易には古びないだろう。
本ビデオは、現在、DVD版で販売されているほか、YouTubeで解説書も含めて公開されている。各巻は複数エピソードから成り、一部だけ授業に取り入れることも可能である。
▶ 金田智子(学習院大学)
※ 国立国語研究所が70年の歴史において刊行してきた資料・報告のうち、代表的なもの(の一部)を紹介しています。