国語研の窓

第2号(2000年1月1日発行)

暮らしに生きることば

「元日」

お正月にちなんで、「元日」の頭の音をとりあげてみましょう。

元日のガをグヮのように発音する地域があります。歴史的仮名遣いでは、元日の「元」を「ぐわん」と表記します。今は、ガンと読みますから、歴史的仮名遣いと現在の発音は異なります。この「ぐわ」のような表記は、中国語での漢字の発音を表すもので、「合拗音(ごうようおん)」と呼ばれます。火事・菓子のカを「くわ」と書いたのもそれにあたります。お正月のガも「ぐわ」です。現代仮名遣いでは「か・が」で表し、「ぐわ」は用いません。右の地図は約40年前の調査結果ですので、現在では耳にする機会がさらに減っています。

国立国語研究所『日本言語地図』第1集(1966年刊)第5図より
国立国語研究所『日本言語地図』第1集(1966年刊)第5図より

『国語研の窓』は1999年~2009年に発行された広報誌です。記事内のデータやURLは全て発行当時のものです。