ことばの疑問

「分かる」「判る」「解る」はどう違いますか

2018.12.25 石井久美子

質問

「分かる」「判る」「解る」はどう違いますか。

分かる,判る,解るはどう違う?

回答

「分かる」「判る」「解る」は,「わかる」という同じ訓を持ちますが,異なる漢字で書かれています。こうした関係性を日本語学の用語では「異字同訓」と呼びます。

「分かる」「判る」「解る」のうち,最も多く目にしているのはどれでしょうか。「現代日本語書き言葉均衡コーパス(BCCWJ)」(書籍全般,雑誌全般,新聞,白書,ブログ,ネット掲示板,教科書,法律などからデータを収集)で検索すると,「分かる」は19,877件,「判る」は2,657件,「解る」は2,176件がヒットします(今回は,検索サイト「中納言」を用いて調査しました。ほかに登録不要の「少納言」もあります)。

分かる,判る,解るのうち最も多く目にしているのはどれでしょう?

では,3種類の漢字表記の中で,「分かる」が最も多い結果となるのはなぜでしょうか。

まず,漢字の読み方という観点から理由を考えてみます。誰にとってもわかりやすい漢字として,「常用漢字表」(2010年11月改定)が定められています。この表は,「法令,公用文書,新聞,雑誌,放送など,一般社会において,現代の国語を書き表す場合の漢字の使用の目安を表すもの」であり,学校の漢字教育の指針ともされてきました。表には,漢字とともにその音訓が示されており,「分」「判」「解」の中では,「分」のみが「わかる」という訓読みをすると定められています。すなわち,一般には,特に振り仮名等で漢字の読みを示さずとも「わかる」と読んでもらえることが期待されるのは,「分かる」と書かれる場合のみです。そのため,「分かる」が最も多く用いられているのだと考えられます。

次に,3種類の漢字表記を,意味という点から考えてみます。「判る」は「物事がそれと判別・判断される」(『明鏡国語辞典第二版』大修館書店)という意味であり,「判明」「判別」といった漢語が連想されます。例えば,「倹約と吝嗇(りんしょく)(注)の違いが判らぬ」「敵方の人間なのか味方なのか判らなかった」などと用いられます。一方,「解る」は「物事の意味,内容,価値などが理解できる。」(『明鏡国語辞典第二版』大修館書店)あるいは「人情・世情に通じていて人の気持ちなどがよく理解できる。」(『明鏡国語辞典第二版』大修館書店)という意味であり,「解明」「理解」といった漢語が思い浮かびます。「日本語も相当解る」「言っている意味が解らない」「無理して私の気持ちを誰かに解って貰おうとも思わない」といった用いられ方をしています。それに対し,「分かる」という漢字表記では,「判る」「解る」のどちらの意味も網羅することができます。

つまり,一般的には「分かる」の表記が用いられ,それがカバーする意味は広いのです。そして,より厳密に意味を踏まえて書き分けたい場合には,「判る」「解る」と漢字が当てられます。このように,3種類の漢字表記は,「わかる」という同じ訓を持ちながら,意味が異なっているのです。

)吝嗇とは「ひどく物惜しみをすること。けち。」という意味。

書いた人

石井久美子

ISHII Kumiko
いしい くみこ●お茶の水女子大学 基幹研究院 人文科学系 助教。
お茶の水女子大学 大学院 博士後期課程 修了。博士(人文科学)。2015年10月より現職。専門は日本語学。平成25年度(第8回)漢検漢字文化研究奨励賞佳作受賞。主な著作に『大正期の言論誌に見る外来語の研究』(三弥井書店,2017年)がある。

参考文献・おすすめ本・サイト

  • 小椋秀樹(2012)「コーパスに基づく現代語表記のゆれの調査 ― BCCWJ コアデータを資料として―」,『第1回コーパス日本語学ワークショップ予稿集』,pp.321-328
  • 三省堂編修所 編(2018)『新しい国語表記ハンドブック第八版』三省堂
  • 明治書院(2014)『日本語学』33(10)(特集:異字同訓とは)