Vol. 15-1 (2025年11月公開)

「要するに」と言ったのに要約していない、むしろ冗長になっている。
そんな会話を耳にしたり、自分で口にしたりしたことはありませんか?
「要するに」は、元の意味を失い「えっと」「あのー」と同じように
会話をつなぐフィラーや、会話の展開を示す談話標識としても使われています。
同じような使われ方をしている言葉は? こうした使われ方が広がった背景とは?
フィラーはない方がよい?
YouTubeとPodcastで配信中の人気番組
『ゆる言語学ラジオ』のスピーカー・水野太貴さんを国語研に迎え、
コーパス* などで用例を確認しながら
語り合います。
メンバー |
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李 琦
水野太貴
石黒 圭
小磯花絵
柏野和佳子
水野:さっそく僕が聞きたいことを聞いてもいいですか。最近、使用実態について気になっているのが、「ある種」です。種類を指定したいわけでもないときに「ある種」を使う人が増えているように感じます。「要するに」は、前に述べたことを簡潔に示すという本来の意味を失って、フィラーや談話標識のように使われていますよね。それと同じ事例なのかなと思ったのですが、「ある種」が談話標識のように使われていることを述べた研究はあるのでしょうか。
柏野:私は、フィラーや談話標識になっている言葉が大好きでいろいろ調べていますが、「ある種」は今のお話で初めて気が付きました。水野さん、鋭いです。
小磯:今『日本語日常会話コーパス』* を調べたら、「ある種」は29件でした。「ある種聖人」(35-39歳、男性)、「ある種気付ける」(20-24歳、男性)などがあります。いくつか音声を再生してみますね。「なんかだったら、ある種言い方悪いけど、別に俺もやるよ」(20-24歳、男性)。「逆の意味で、あの会は、なんかこう派手とゆうか、こう煌びやかな世界だったり、ある種、こう変な話し、悪い意味じゃないですけど」(25-29歳、男性)。
水野:最後の例は、全部盛りですね。変ではない「変な話」も出して。
石黒:「ある種」って別の言葉で言うとどんな意味なのかなと考えてみたのですが、「見方によっては」と言い換えができるように思います。話し言葉では、いろいろな見方がある中で個人的な見方を述べるときに、何かしら言葉を付けるという傾向があります。「と思う」もその一つです。この場合、「思う」に重点があるのではなく、個人的な見方であることを示すために「と思う」を付けています。「ある種」もそれと似ていて、「個人的な見方では」という意味が含まれているのではないでしょうか。私は「個人的には」という表現をよく使ってしまうのですが、自分が言おうとしていることを暫定的かつ矮小化することによって、後で言い逃れができるようにしているのかもしれません。「ある種」と言っておけば安全、そういう談話的な働きもあるのかなと思っています。
李:「ある種」を使って自分の意見をあいまいにして強く言わないというのは、日本社会の優しさと関係しているのではないでしょうか。こうした意味での「ある種」は、中国語にはうまく訳せません。
水野:「ある意味」が「意味」を示していないときも使えるように、「ある種」も「種類」を示していないときでも使えるようになっているということですよね。「ある種」は「ある意味」より後に登場した形式のように思います。そうだとすると、すでに「ある意味」があるのに、なぜ「ある種」という新しい形式が広まっていったのでしょうか。

石黒:「ある意味すごい」とは言いますが、「ある種すごい」とはあまり言わないのではないでしょうか。全てに当てはまるわけではありませんが、「ある意味」の後ろには、わりとポジティブな内容が続きやすいようです。皮肉を込めた場合もあるかもしれませんけれども。一方で「ある種」は、先ほどのコーパスの用例でもネガティブな文脈で使われているものが多いようでした。新しい形式はそれまでの形式ができなかったことをしようとしているはずです。「要するに」と「要は」も似たようなパターンなのですが、両方使われているということは、重なる部分があるにしても、それぞれ異なる役割をしていると考えられます。
柏野:『日本語日常会話コーパス』では、「ある種」を使っているのは男性が多いですね。
小磯:29例中、女性は2例だけです。「ある種サークルみたいな感じ」(20-24歳、女性)、「ある種の刺激を求めて」(20-24歳、女性)。
水野:私の周りで「ある種」をよく使う人も、みんな男性です。ジェンダーと関係しているという感覚は、まったくありませんでした。

李:以前『日本語日常会話コーパス』で調べたところ、「要するに」「要は」の使用は女性より男性が多いことが分かりました※1。女性も「要するに」を使っていますが、伝統的な使い方に近いです。それに対して男性は、「要するに」と言いながら要していないで、その後の文が長くなる傾向があります。
石黒先生の研究に、「すなわち」「つまり」「要するに」の使用実態を比較したものがあります※2。それによれば、いずれも換言を表す接続語ですが、「すなわち」は前の文脈とイコールであることを示しているので自分の解釈を入れづらいのに対し、「つまり」と「要するに」は自分の解釈を入れやすい。さらに、「つまり」より「要するに」の方が自由度が高い、と述べています。
※1 李 琦(2024)「換言を表す接続表現の「つまり」「要するに」「要は」の相違―話者の性別による検討―」日本語学会2024年度春季大会
※2 石黒 圭(2001)「換言を表す接続語について―「すなわち」「つまり」「要するに」を中心に―」『日本語教育』110
水野:それまでの形式が主観を入れづらかったのだとしたら、主観を入れやすい「要するに」が求められる土壌があったという説明になりますね。
李:もしかしたら、これからも新しい形式が増えていくかもしれませんね。
水野:「ある種」は比較的新しく出現したものだと思いますが、10年後にはどんな言葉が談話標識の新キャラとして登場してくるのか、気になります。
石黒:「ある種」や「ある意味」では、「種」や「意味」よりも「ある」の方が大事なのかなと思います。「ある」の後ろに何を置くかによって、新しい形式が生まれます。逆のパターンとしては、「変な話」「真面目な話」「ここだけの話」のように「話」の方が固定されているものがあります。これも、前にどの形容詞を付けるかによってバリエーションが生まれます。
水野:「ある」の後ろには、抽象的な名詞だったら何でもこれそうな気がします。「ある面」とか、どうですかね。
水野:YouTubeで公開されている小磯先生の講演「コーパスを通して日常のことばの特徴を探る」では、「ている」が「てる」と縮約される割合が日常会話では97%に上ると紹介されていました。「だから」が「だー」という縮約形で使われることも多くありませんか?

小磯:「だから(dakara)」ですが、母音のaに挟まれたrは脱落しやすく「ダカー(daka:)」となることがよくあります。破裂音のkもさらに落ちて、「ダー(da:)」となることは、音声的には十分あり得ます。ただし、速く話していたりすると、意識して「だー」と言っているのか、発音のなまけで「だー」になっているのかは、詳しく調べる必要があるでしょう。
石黒:「だから」には、「だー」「だか」「だ」など、さまざまな発音のバリエーションがあります。でも、表記されるときは「だから」です。一方で「というか」の場合、「てか」「つうか」などの発音のバリエーションがあり、表記としてもよく見ます。短く発音されている語の中には、そのまま書き言葉に採用されるものと、書き言葉にするときは短縮せずに表記されるものと、2パターンあります。
水野:その点が一番気になっていたのかもしれません。そう問いを立てればいいのですね。
小磯:コーパスでは、品詞など研究用の情報を付加するために形態素解析をする必要があるので、話し言葉は全て書き起こします。例えば、国語研所長の名前「前川(maekawa)」は、aに挟まれたwが落ちやすいので、「マエカー」と発音されていることが多いです。でも、それは「マエカー」と意識して発音しているわけではないので、「まえかー」とは書き起こしません。日常においても書き言葉で書くか書かないかは、意識して発音しているかどうかが、一つの基準になっているのかもしれません。
水野:今の時代に開発されたコーパスを後世の研究者が見て、なんで音声的には「だー」なのに、「だから」と書き起こしているのだろうと疑問に思う可能性もあるわけですね、変な話。あれっ、これは「変な話」なのかな……。5年後にXのバズツイートで「だから」を「だか」とか「だー」と書いている人がいて、以降その表記が爆発的に流行って、みたいなこと、全然あり得ますよね。
石黒:あり得ます。
小磯:SNSなどでは、話し言葉に近い言葉が使われています。そうした「打ち言葉」によって、縮約形が書き言葉にも広がっていくかもしれません。
柏野:水野さんは配信番組で話をするとき、フィラーを控えたり、相づちを打ちすぎないようにしたり、気を付けているのですか?
水野:僕はあまり意識していないのですが、『ゆる言語学ラジオ』を一緒にやっている堀元さんからフィードバックがあったことは直しています。最初のころは、相づちがうるさいと言われましたね。日常会話では文節や読点が付くあたりで「はい」「うん」と言いますが、音声コンテンツでは多すぎてうるさく感じられるようです。なので、話の途中で相づちを打つのではなく、話し終わってからリアクションをするようにしています。フィラーやポーズは編集で削除しています。
堀元さんが別の番組『積読チャンネル』を始めた当初、スピーカーの書店員・飯田さんは音声コンテンツに慣れていなかったこともあり、堀元さんから鬼のような指摘を受けて自分の話し方を改造したそうです。まず、フィラーの削除と相づちを減らす。語尾の延伸をなくす。「いや〜」「やっぱ」などしゃべり出しの前置きを削除する。そうした改造の結果、堀元さんの編集の手間は大幅に減りました。ただ最近では、飯田さんが奥さんに「ゴミ出しした?」と聞かれ、したかどうかを思い出しているときにフィラーを一切出さなかったら、奥さんから「えっ、なに怖い」と言われて、落ち込んだそうなんです。
柏野:会話ではフィラーが重要なんですよね。
小磯:学会講演でも、あまりにも滑らかに話されると、スッと通り抜けてしまって内容があまり頭に入ってきません。私がいつも話し方が上手だなと感じている研究者の学会講演が『日本語話し言葉コーパス』* に収録されていたので、フィラーを分析してみました。すると、意外に多くありました。重要なことを言う前に、表現を考えているようなフィラーが入っています。聞き手も話を認知的に処理するためには時間が必要で、また話の区切りも分かるので、適度にフィラーがあると理解が進むのです。
水野:配信のようなショービジネスとは異なり、普通の会話では、フィラーもあって、相づちをいっぱい打った方が、相手は心を開いて会話してくれると思います。最近、本※3 を出したのですが、そこでもフィラーは大事なものだよ、ということを書いています。
※3 水野太貴『会話の0.2秒を言語学する』(新潮社)

柏野:プロ野球のヒーローインタビューで質問に対してまず「そうですね」と言うのを、新庄剛志監督が2021年ごろから禁止しているという記事を見ました。いいことを言おうと考えたら駄目で、思ったことをそのまま話しなさい、ということのようです。それはいいなと思う一方、「そうですね」を禁止されてしまうのは、つらいだろうなとも思います。
小磯:「そうですね」は、考えるための時間稼ぎにも使えますよね。
水野:簡単な演算をするときには「えーと」と言ったりします。サッカーの試合後インタビューでは「まー」の使用が多いという研究を、岡山大学の堤良一先生の研究室の学生さんがしています。その研究では、試合直後のサッカー選手は疲れているから、あまり多くを語りたくはなく、まとめ上げたいためだと、述べています。「えーと」や「まー」でもいいはずなのに、プロ野球のインタビューで「そうですね」が出るのは、なぜなのですかね。
李:「まー」は、あまりポジティブな印象がないですね。「そうですね」は、ポジティブとネガティブのどちらでもない。また、「まー」は結論がある程度出ているのに対して、「そうですね」は今考えている、という違いも感じます。
水野:イエスかノーで聞かれていない質問に対して「そうですね」と答えるのは、最近のことなのでしょうか。
小磯:国語研は1950年代に話し言葉の研究を始め、オープンリールのレコーダーを使って日常会話や講義などを録音しました。そのデータが収録されている『昭和話し言葉コーパス』* で「そうですね」を調べると、261件あります。例えば、「お休みの日はどうしてらっしゃるんです」と男性が聞き、女性(20-24歳)が「そうですね、ええ、もう昼ごろまで寝ちゃうんですよ」と答えています。これは1958年に録音された会話です。ほかの用例についても文脈を確認する必要がありますが、少なくとも1950年代にはイエスかノーで答えられない質問に対して、「そうですね」が使われていたことが分かります。
石黒:「そう」というのは、相手の発話を指している部分もあるのかもしれません。これから真剣に考えるから少々時間をくださいと宣言しているあたりが、「まー」に比べて、丁寧さに結び付くのかなと思いました。「です」を付けていること自体が丁寧ですよね。
水野:「そうですね」と同じように「ですね」が付いている語で、「なるほどですね」も気になっています。
柏野:言われると腹が立つという意見の出る言葉として、ときどき話題になります。
水野:一部の人には嫌われていますよね。「なるほど」に「です」と共感を示す「ね」が付いているだけなのに、なぜか失礼を感じる人がいるという。不思議です。
小磯:『日本語日常会話コーパス』には、失礼さとは関係なさそうな「なるほどですね」の使用例が2例見られます。
水野:フィラーは言語化を促進する気がしているのですが、実験的に示された例はあるのですか。エピソードトークをする、簡単な計算をする、何かを思い出すなど、さまざまなタスクについて、フィラーを禁じる群と禁じない群で、言語化の促進が変わるかどうかを知りたいです。
柏野:研究ではありませんが、丸山岳彦先生(現 専修大学)が2015年の国語研一般公開のとき、ことばのミニ講義「話しことばのひみつどうぐ」でちょっとした実験をやっています。隣の人とペアをつくり、一人が質問し、もう一人が答えるのですが、答える人はフィラーを絶対使ってはいけないというものです。フィラーを使わないと、とても話しづらくなることを体験してもらいました。
石黒:フィラーを禁じると、短期的には発話力が落ちるのは、その通りだと思います。しかし、ある程度たつと元に戻って、自分の言いたいことをポンと出せるようになるかもしれません。低下した発話力がどのように復元するのか、復元した後の話し方は以前と同じなのか。そういったことが研究できたら面白いなと思います。ヒーローインタビューで「そうですね」を禁じた結果、話し方や内容がどう変わったのかも知りたいです。

柏野:こうして話していると、「あのー」「えーと」や「変な話」といったまさに話題になっている言葉がふと出たり、「だから」が「だー」になっていたりします。今回の実際の会話の中にも、研究として着目したいことがたくさんありました。
李:私がこれまで研究対象としてきた「要するに」「要は」などの接続詞以外にも、フィラーとなっている言葉には「ある種」などいろいろなものがあることに気付きました。そうした研究にも取り組んでいきたいと思います。
石黒:こうした座談会のような場面では、限られた時間で受け答えをしないといけません。その中で、言葉を紡ぎ出すための時間を、またその表現を、どのようにコントロールしているかをあらためて考えるきっかけになりました。
小磯:丸山先生が『ゆる言語学ラジオ』にゲスト出演した「コーパス作りの過酷さを、制作者自身が語る」の回を聞いたとき、研究者の目線では出てこないような話をされているなと思いました。どういう目線で見るかによって、コーパスから引き出せることも違ってきます。「ある種」に始まり気付いていなかった観点がいくつもあったので、今後はそうした新しい目線でもコーパスを見ていきたいと思います。
水野:これがしゃべり方の正解だ、こういうようにしゃべると社会的に成功できるなどと、流ちょうにしゃべれることが価値に結び付くというのは、よくないのではないか。といったことを、ここ1〜2年考えていました。それとも関連して気になっていたことを自由に質問できて、それに対していろいろな知見をいただけて、役得な時間でした。ありがとうございました。
コーパスは、実際に使われた言葉を大量かつ体系的に集め、品詞情報など研究用の情報を付加して、さまざまな検索ができるようにした、言葉のデータベース。国語研のウェブサイトで公開しているコーパス検索アプリケーション「中納言」では、14種類のコーパスのデータを検索できる(要ユーザ登録)。
『ゆる言語学ラジオ』スピーカー。1995年生まれ。名古屋大学文学部卒業。専攻は言語学。出版社で雑誌編集者として勤務。著書に『会話の0.2秒を言語学する』(新潮社)、『きょう、ゴリラをうえたよ 愉快で深いこどものいいまちがい集』(文、KADOKAWA)などがある。
国立国語研究所 研究系 教授。総合研究大学院大学 教授。一橋大学大学院 言語社会研究科 連携教授。博士(理学)。専門はコーパス言語学、談話分析、認知科学。『日本語話し言葉コーパス』『日本語日常会話コーパス』などの開発に携わる。著書に『言語コミュニケーションの多様性』(共著、くろしお出版)など。
国立国語研究所 研究系 教授。総合研究大学院大学 教授・日本語言語科学コース長。一橋大学大学院 言語社会研究科 連携教授。博士(文学)。専門は日本語学・日本語教育学。『ていねいな文章大全:日本語の「伝わらない」を解決する108のヒント』(ダイヤモンド社)など著書多数。
国立国語研究所 研究系 教授。総合研究大学院大学 教授。一橋大学大学院 言語社会研究科 連携教授。博士(学術)。専門は日本語学。『岩波国語辞典』『広辞苑』の改訂にも携わる。著書に『理想の辞書を求めて学習者にほんとうに役立つ辞書とは』(共著、明治書院)など。
国立国語研究所 共同研究プロジェクト「多世代会話コーパスに基づく話し言葉の総合的研究」共同研究員。一橋大学大学院 言語社会研究科第2部門 博士後期課程に在籍。修士(教育学)。専門は日本語学、日本語教育。