催事の司会をする際に、「本日は御来場くださいまして、ありがとうございます。」と言うか、「本日は御来場いただきまして、ありがとうございます。」と言うか、社内で意見が分かれています。どちらが良いでしょうか。
「ゴ(お)~くださる」は「~てくれる」の意を表す尊敬語です。一方、「ゴ(お)~いただく」は「~てもらう」の意を表す謙譲語です。単純に謙譲語よりも直接相手の動作を高める尊敬語の方が、敬意度が高い、と判断する人もいます。
一方、たとえば、
「緑のフェア」に御参加くださった方には、緑化運動に御協力いただいた御礼に、シールを差し上げています。
というように使い分けることが出来ます。ここでは、「御参加くださる」は相手の行為、「御協力いただく」は、その行為に恩恵を伴うことをより中心にした言い回しになっています。 また、つぎのようにも言い分けられるでしょう。
開店前の早い時間から御来店いただきまして、誠にありがとうございます。本日は雨天につき定刻より前に開錠しました。どうぞ自動ドアを手動であけて、店内に御入場ください。
こちらから望んで動作を促すときには、「ゴ(お)~ください」といえますが、「ゴ(お)~いただく」をいきなり相手にあつらえることはできません。反対に、のぞむ場合には、「いただきたい」といえますが、「くださりたい」は言いません。
さて、質問者の場合は、尊敬と謙譲のどちらがいいか、と議論になっています。この例の場合はどちらでもいいが、使い分ける場合もある、というのが回答です。たとえば「悪天の中を」が前にあれば、「くださる」の方が、よりしっくりいくと考えることは可能です。「こんなに大勢の方に」が前にあれば、「いただく」の方が感謝の言葉らしく聞こえるのではないでしょうか。なお、「こんなに大勢の方が」の場合には主格の直接の動作の尊敬(くださる)に表す方がよいでしょう。