国立国語研究所が公開している資料の中には『言語地図』と呼ばれるものがたくさんあります。たとえば、『日本言語地図』(https://mmsrv.ninjal.ac.jp/laj_map/)は全国各地の方言において、どのような語形や発音がどこに現れるかを、項目ごとに表示した地図集です。このような本格的な『言語地図』を作りあげるには専門家の丹念な調査と多くの時間が必要ですが、たとえ専門知識がなくても、みんなの力を合わせることでひとつの言語地図を作りあげることは可能です。それを体験できるのが、国立国語研究所の展示企画のひとつ「地図で見る日本の方言『参加型言語地図』」です。
2018年より始まったこの展示は、「モバイルミュージアム」という折りたたんで持ち運びができるユニットを使うことで、全国の大学やイベント会場を巡回しています。たくさんの方が参加することで、この地図がどう変わっていったのかを見てみましょう。
国語研に納品された当初の写真です。右側のパネルが『参加型言語地図』です。まだ真っ白な状態です。
この『参加型言語地図』が表すのは「傷ができた時に貼るこれ(絆創膏の絵)」の呼び方です。参加者は自分の出身地での「これ」の呼び名を、該当する選択肢から選び、地図に色シールを貼ります。
シールは、赤:バンソウコウ、緑:バンドエイド、オレンジ:サビオ、水色:カットバン、黄色:リバテープ、紺色:キズバン、赤紫:その他 を表します。
納品後しばらくは、国語研のロビーでのみ展示しました。研究者や職員、所内見学に来た中高生がぽつぽつとシールを貼ってくれました。
2018年5月、神奈川大学での展示を皮切りにモバイルミュージアムの巡回が始まりました。続いて、弘前大学でも展示され、地図の各地にシールが貼られています。呼び名の傾向はまだよくわかりません。
2018年8月、羽田空港国際線旅客ターミナルで展示が行われました。白地図のラインはすっかりシールに隠れています。写真は通りがかりに参加してくれた親子です。
シールに埋め尽くされて盛り上がった現在の『参加型言語地図』です。特定の色シールが集中している地域がありますね。2020年12月17日までは静岡市の静岡英和学院大学にて展示を行っていますので、お近くの方はぜひご参加ください(展示の詳細はイベント案内をご覧ください)。
同様の地図を、他のことばでも作っています。写真は雑菌が原因で生じる「ものもらい」の方言地図です。みなさんの出身地ではどう呼んでいますか。展示を見かけたらぜひ気軽に参加してみてくださいね。