日本語は海外でどのように受け入れられているのでしょうか。
※ この記事の初出は『新「ことば」シリーズ』15号(2002、国立国語研究所)です。当時の雰囲気を感じられる「ことばのタイムカプセル」として、若干の修正を加えた上で公開します。
一口に「外国語を受け入れる」といってもいろいろなタイプがあります。外国語を商取引の手段として用いる人もいれば、「簡単な会話ができればよい」「ある程度文章が読めればよい」という人もいるでしょう。また、単に日本語のプリントされたTシャツを着て楽しむだけという人もいるでしょう。
ここでは、国立国語研究所が1997年1月から1998年8月にわたり、日本を含む28の国と地域で行った「日本語観国際センサス」の調査結果から、海外における日本語の受け入れ方をうかがわせるデータを二つ紹介します。
図1は、中国、台湾、タイ、シンガポール、韓国の5地域で「最も習いたい言語」として「ドイツ語」「中国語」「英語」「日本語」をあげた人が、その言語を習いたい理由としてあげたことがらを示したものです。これを見ると、日本語は「国際間の共通語」とは見られていませんが、「その国で旅行をもっと楽しむ」、「最新の情報を身につける」、「仕事で必要」、「いい職につける」といった回答は比較的多くなっています。
図2は、中国、台湾、タイ、シンガポール、韓国の5地域で「自国内で日本語を見たり、聞いたりした場所」について質問した結果をまとめたものです。国によってかなり違いがあることがわかる一方で、「歌の歌詞で」「漫画やコミックスで」という回答が多いことが注目されます。
これらの結果からは、日本語は、仕事の手段と見られている面がある一方で、文化や情報に接する際の媒体として受け入れられているという傾向がかなりあることがわかります。
(菅井英明)