Vol. 13-2 (2024年4月公開)
国立国語研究所の研究者が関わった書籍を紹介します(2023年7〜12月発行)

石黒圭
ダイヤモンド社、2023年9月
文章を書くのは得意ですか? そう問われて、得意ですと即答できる人は限られます。しかし、私たちの仕事は言葉でできています。学生であっても、論文・レポートなど文章を書く機会は少なくなく、職場でも学校でも、私たちは書いた文章で評価されます。字が汚い人がきれいな字を書くことは難しいのですが、字をていねいに読みやすく書くことならできます。同様に、文章が苦手な人が名文を書くことは難しいのですが、文章をていねいに読みやすく書くことならできます。本書は、日本語研究者の立場から、文章をていねいに書くときの勘どころをまとめたものです。ご自身の文章の確認・校正に、ぜひご活用ください。

窪薗晴夫
くろしお出版、2023年10月
本書は、1995年に出版した『語形成と音韻構造』(くろしお出版)の続編として、過去30余年間の私の研究を、国内外における研究動向を踏まえてまとめたものです。音韻現象の普遍性や記述の一般性が求められる中、本書は東京方言の複合語アクセント(第2章)、「紅白歌合戦」のような音韻的に一語化しない複合語(第3章)、「NHK」などのアルファベット頭文字語(第4章)、「インスタ」(グラム)などの短縮語(第5章)、「ゴジラ」などの混成語やポケモンの命名(第6章)、「マンマ」などの赤ちゃん言葉や「サイヤ人」などの逆さ言葉(第7章)といったさまざまな語形成過程を、一般言語学の視点から考察しました。

松村雪枝〈文〉、横山晶子〈言語監修・解説〉、Hara Alina〈英語翻訳〉
言語復興の港、奈良芸術短期大学、2023年10月
奄美群島沖永良部島の作家、松村雪枝さんの連作物語「てぃんがま」から2編を、奈良芸術短期大学の小島光貴さん、田中茉央さんのイラストで絵本化しました。しまむに(沖永良部方言)・日本語・英語の3言語で、巻末に方言の解説が付いています。『はちうえのハイビスカス』は死期における生き方を、『洋服のおしゃべり』は意思を持ち表現する力を描いた作品です。絵本を通じてしまむにに興味を持つ人が増え、危機言語を継承する一助になることを願っています。

大西拓一郎
大修館書店、2023年11月
方言という、ことばの地理的異なりを理解するためには、違いを生み出すもととなる言語変化を解明することが必要です。語彙の基本変化である「類音牽引」「同音衝突」「民間語源」「混淆」を「有縁化」という概念で統一的に説明しました。このような語彙が示す方言分布と、文法の分布は、特性が異なります。そのことを地図とグラフを使って明確化し、「方言分布の基本法則」を導き出しました。以上を基盤に学史上の「方言周圏論」と「方言区画論」の対立問題への視点を示し、言語地理学の進むべき指針を明らかにしました。図版を多用することで、一般の読者の方にも理解しやすい内容になっています。

岡部嘉幸、橋本行洋、小木曽智信〈編〉
ひつじ書房、2023年12月
本書は『日本語歴史コーパス』(CHJ)の構築と活用を行ってきた国語研「通時コーパス」プロジェクトによるシリーズの1冊です。「CHJ 江戸時代編」を活用して行われた研究と、その設計や利用方法の解説から成ります。既刊の『中古・中世編』『近代編』の間に入るもので、3冊を時代順に並べると表紙や背表紙が1 つにつながるデザインになっています。この表紙のように、近世語資料は日本語の歴史をつなげて見る際に必須のものですが、従来は紙の総索引すら整備が進んでおらず、コーパスが切望されていました。今、そのコーパスと利用ガイドとなる本書が世に出たことで、日本語の通時的研究がいっそう進展することに期待します。
石黒圭〈監修〉、杨秀娥、费晓东、董芸、田佳月〈編〉
外语教学与研究出版社、2023年9月

柏野和佳子〈監修〉
高橋書店、2023年11月
