ことばの波止場

Vol. 13-1 (2023年11月公開)

書籍紹介

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国立国語研究所の研究者が関わった書籍を紹介します(2023年1〜6月発行)

現代日本語における句読点の研究―研究概観と使用傾向の定量的分析

現代日本語における句読点の研究 書影

岩崎拓也
ココ出版、2023年2月

本書は、日本語の句読点について、これまでの研究と使用実態を明らかにすることを目的としてまとめられた一冊です。句読点研究については、日本語学・国語教育・日本語教育における研究を網羅的にレビューして、その変遷をまとめています。句読点の使用実態については、日本語母語話者と日本語学習者の2つの側面から検討しています。日本語母語話者の句読点の打ち方については、接続詞直後の読点の使用や、括弧と句点の組み合わせの特徴などを分析・考察しています。また、日本語学習者の句読点使用については、句読点の多寡や助詞直後の読点の打ち方、日本語の習熟度と句読点使用の関係、母語による影響などを、定量的な分析と考察から明らかにしています。本書は、日本語の句読点についての研究を志す人に必携の一冊となっています。

▶岩崎拓也(筑波大学)

現代日本語における否定的評価を表す とりたて詞の研究

現代日本語における否定的評価を表す とりたて詞の研究 書影

井戸美里
くろしお出版、2023年2月

本書は、日本語の否定的評価を表すとりたて詞の意味的、形態・統語的現象について、記述的な一般化を行ったものです。日本語には、「洋子は電車で化粧ナンカしている」のナンカのように、話者の否定的な評価を「含み」として表示する働きを持つ、とりたて詞と呼ばれる特徴的な語群が存在します。先行研究では、とりたて詞は主となる命題と「含み」となる命題の論理的関係を表すものと考えられ、話者の評価のような主観的要素とは切り離して研究されてきました。一方本書では、むしろ話者の評価のような主観的要素こそが本質的に、とりたて詞の言語現象に意味的、形態・統語的に関与していることを、多様な現象記述を通して示しています。

▶井戸美里

方言地理学の視界

方言地理学の視界 書影

小林隆、大西拓一郎、篠崎晃一〈編〉
勉誠出版、2023年5月

方言が空間的な言語のバリエーションである以上、方言の研究では地理的視点を欠かすことができません。同時に、方言は言語として、語彙、文法、言語行動などの諸側面を持ち、それぞれが空間上での多様性を有します。また、日本の方言学は、方言地図を中心に地理的視点を追究するための資料を多くつくってきました。それらの諸分野で、先駆的かつ多くの優れた業績を残した、国立国語研究所名誉所員の佐藤亮一氏が、2020年11月に亡くなりました。方言の将来まで見越した佐藤氏による多方面の研究をたどりつつ、考え方の基盤を検証することを通して、方言地理学の進むべき方向を照らす論集を24名の気鋭の執筆陣により編みました。佐藤氏の略歴ならびに著作一覧も掲載しています。

▶大西拓一郎

日本語研究者がやさしく教える 「きちんと伝わる」文章の授業

「きちんと伝わる」文章の授業 書影

石黒圭〈編〉、井伊菜穂子、市江愛、井上雄太、本多由美子〈著〉
日本実業出版社、2023年2月

本書は「文章を書くのが苦手」「もっと上手に文章を書きたい」と思う人に向けた本です。アイデアを文章にするのは難しいものです。本書は、1章「考えを形にする」、2章「変化をつける」、3章「中身を改める」、4章「相手を思いやる」の4つの章から成り、頭で考えたことを文章にするまでのプロセスが示されています。本書の大きな特徴は、考えたことを文章の形にするだけでなく、内容を吟味し質を高め、読み手への配慮を加えて「きちんと伝わる」文章にするまでの流れが理解できることです。また、書くことにおいて読み手の存在は欠かせません。本書では読み手との関係性によって内容や書き方も変わることが例をもって示されています。本文が先生と生徒の会話形式で始まるなど、読みやすさも意識されています。文章指導を行う教師にも参考になる一冊です。

▶本多由美子
コミュ力は「副詞」で決まる

石黒圭
光文社、2023年4月

コミュ力は「副詞」で決まる 書影